このデータベースとは

はじめに

 このデータベースは、神奈川大学21世紀COEプログラム「人類文化研究のための非文字資料の体系化」第3班3グループ(景観に刻印された人間の諸活動と災害痕跡)「海外神社跡地調査」組の成果である。
戦前、日本帝国の「勢力圏」の拡大に伴い、日本国及び日本人が、アジア太平洋地域に多くの神社(海外神社)を創建した。現在、その数は史料上確認されているものだけでも1,600余社にのぼる。
 いうまでもなく、これらの海外神社は日本の敗戦とともに、その機能は停止したが、われわれは、この海外神社跡地が、戦後60年を経過するなかで、今日どのような形で存在しているのか、海外神社跡地そのものを非文字資料ととらえ、「人類文化研究のための非文字資料の体系化」という全体テーマ及び「環境と景観の資料化と体系化」という第3班のテーマに迫ろうとしたものである。

 その結論の一端は論文編で明らかにしたが、本データベースは、その研究調査の過程で収集した諸資料を収録したものである。もっとも、海外神社の跡地の調査は、神奈川大学の21世紀COEプログラムが開始される2003年の秋より前に、共同研究グループの一員である、中島により1990年度から開始されていた。中島はCOEの活動が開始される以前、旧台湾、旧満洲、旧関東州、旧中華民国、旧朝鮮、旧昭南島の6地域45社の調査を行っていた。その後、COEの共同研究としての活動が開始されるが、2003年10月には旧樺太の12社、2004年8月の旧南洋群島の20社、2005年8月の旧朝鮮の18社、2006年8月の旧満洲の10社と計60社の跡地調査を行った。中島の個人研究分とあわせると、このデータベースには合計103社の跡地関係資料が収録されていることになる。

 この、103社という数は全体の海外神社の数1,600余社から言えば、たかだか6パーセントの数にすぎない。また、先に述べたように、この調査研究は中島の個人研究の段階とCOEの共同研究という大きく二つの時期の調査研究がベースになっている。中島の個人研究段階は単に戦前の海外神社のイメージを膨らませるためにその跡地の研究を行ってきたものである。これに対して、COEの共同研究は戦後の海外神社の跡地そのものを非文字資料として位置づけ、しかもそれを景観や環境と関わらせての調査研究であった。また、後者の段階でも歴史学の中島だけではなく、建築学の津田や冨井との共同研究であったが、海外神社跡地を環境や景観の問題と関わらせるために、そもそもどのような調査研究を行えば良いのかという試行錯誤、進化発展の連続であった。こういう点から、このデータベースに収録した跡地関係のデータは必ずしも統一・規格化されたものとはなっていない。しかしながら、戦前の日本の「勢力圏」のほぼ全地域を網羅した、この海外神社跡地の調査研究に関するデータベースは、それが、単に初めての試みというだけではなく、論文編で明らかにしたように海外神社跡地を景観や環境と関わらせて、非文字資料の体系化というテーマに迫る上で、それなりの意味を持っているものと言えよう。

 もっともこのデータベースには、単に我々が調査した海外神社の跡地に関する資料だけではなく、その神社が戦前機能していた時代の写真等の資料をも収録している。また、それだけではなく、われわれが調査出来なかった多くの海外神社の当時の写真も収録している。その中には、日本の統治権の及ばなかったハワイやアメリカ合衆国に建てられた神社(広義の海外神社)が含まれている。今日、一般に公開されている海外神社の当時の写真の中で、最も多くの神社を収録しているのは辻子実『侵略神社—靖国思想を考えるために−』(新幹社、2003年)の7地域110社(230葉)である。本データベースを作成する上でこの辻子の仕事に追うところ大なるものがあったが、このデータベースにはその数をはるかに越える、9地域、279社(2105葉)の写真・図面等を収録している。この意味でも本データベースの作成は大きな意味を持っているものといえよう。本データベースの表題を「『海外神社』(跡地)に関するデータベース」と名づけたのもその意味からである。
 海外神社の研究は1990年代以降、急速の進展を見せているが、本データベースがそれをさらに発展させる一助となれば幸いである。

2007年11月

このデータベースの内容

 本データベースは、海外神社に関する図面・調査表・現状写真と古写真・古絵葉書などから構成されています。
これらのうち、我々が作成や撮影した図面・調査表や現状写真と一部古絵葉書は我々が所蔵しますが、多くの古絵葉書・古写真・図面は既刊の書籍・雑誌から転載しています。そのため、我々が所蔵する資料および著作権が切れた書籍・雑誌と許諾が得られた書物からの転載されたデータは全面的に公開していますが、現時点で許諾が得られていない写真等については外部からアクセスできない措置を取っております。ただし、画像情報以外のデータについては公開しておりますので、そのデータをもとに、もとの書物に当たることが十分可能なはずです。当然のことながら、現時点で許諾が得られていないデータについても、許諾が得られ次第公開していきたいと考えております。

 本データベースの特色は、通常よく見られる所蔵資料を整理完了後に公開するデータベースと異なり、データを収集しつつ、順次公開していくという、常に変化発展していくデータベースであるという点にあります。収集データを保留することなく、迅速に公開することを最重要視しているため、必ずしも完成されたデータになってない場合もありますが、内容については順次改良していく予定であります。

 先にも述べたように、このデータベースは常に変化・発展するデータベースであり、より進化したデータベースになることを我々はめざしております。しかし、最初にこのデータベースを作成した我々だけの能力では、進化・発展し続けさせることは、難しいことであると思われます。進化し続けるデータベースを維持・発展させるためには、このサイトにアクセスし、このデータベースを閲覧される皆様の参加・助力があってこそ可能となると思われます。データ内容に関する意見、新たなデータの情報提供、掲載データの許諾に関する情報、リンク先に関する意見等、このデータベースを進化させるために必要と思われる情報を下記に寄せていただければ幸いであります。

著作権等について

 このデータベースで提供するページの画像や図面などは、我々が所有権・著作権を持つデータ、著作権が切れた文献から転載したデータ、現在も著作権を持つ文献から許諾をえて転載したデータがあります。提供するすべてのデータは、著作権者の許諾を得ることなしに、全部または一部を複製・改変・再配布・販売することを禁じます。提供するデータを印刷物、CD-ROM、DVD、放送、講演などで利用される場合は事前に神奈川大学21世紀COEプログラム・非文字資料研究センター(himoji-coe@kanagawa-u.ac.jp)へご相談下さい。

 なお、岩下傳次郎(『大陸神社大観』)、金沢求也(『満州写真大観』)、世良伊八(『樺太写真帖』)、大西守一(『満州写真帖』)、玉井庶吉(『長春写真帖』)の諸氏についての消息を調査いたしましたが、現在につながる情報を得ることができませんでした。お心あたりのある方はご一報いただければ幸いです。

「海外神社(跡地)に関するデータベース」の構築

 このデータベースは、神奈川大学21世紀COEプログラム「人類文化研究のための非文字資料の体系化」第3班3グループ(景観に刻印された人間の諸活動と災害痕跡)「海外神社跡地調査」組が構築したものであります。

データベース作成に関わった人々

このデータベース構築を中心的に進めたのは以下の4名です。
津田 良樹
中島三千男
堀内 寛晃
大坪 潤子

調査には上記4名のほか以下の6名が参加し、データの収集・作成・撮影等を行いました。
富井 正憲
藤田 庄市
サイモン・ジョン
金  花子
川村 武史
尚  峰

データの入力については、そのほか以下の2名に協力いただきました。
王 京
劉 渇氷

検索プログラム作成、Webページ制作については以下の協力によるものです。
(株)アドベンプロダクツ 滝川晃 林雄一郎 青木理